編集委員会から
編集後記(第36号・2023年秋号)
内外多難・混濁する状況を見る視角は――再始動めざす立憲民主党の枝野幸男さんは何を語ったか
▶ 枝野さんの話を聞くことができた。巻頭の「“保守”・リベラルの政治家、枝野幸男再始動」は、言い方が悪いかもしれないが、面白い。枝野さんが徹底したリアリストであること、それも選挙に最重点を置くリアリズムの政治家であることを改めて認識した。ともかく語り口が「明快」なのである。本誌前号で尾中香尚里さんが「劣化した自民党に退場を促し、代わりに政治を担うのが野党第一党」として、立憲民主党はその旗幟を鮮明にすべきだと指摘されたが、それに応える内容が示されている。
おそらく人々が現在の立憲民主党に対して思うのは「もっとはっきり自分の立場・態度を言え!」ということだろう。その点で枝野さんは、当然のことながら選挙に勝つことが絶対の条件だとして「枝野ビジョン」を打ち出し、それを繰り返すことの必要性を説いている。その当たり前のことをせずしては、「選挙協力」などは絵に描いた餅にもならないということだ。
ただ、枝野さんは「保守・リベラル」と自らを規定しているが、なぜ「保守」なのかをもっと聞くべきだったと感じている。リベラルであることの意味は、保守であるかどうかに左右されないのではないのだろうか。私はかつて(小渕内閣の時代ごろまで)の自民党にはリベラルな面があったが、それが、新自由主義が主流になったことによって消えてしまったように感じている。新自由主義との対比でリベラルを言うのだとすれば、敢えて「保守」という必要もないのではないかと思うが、如何。(大野 隆)
▶ 「停滞を躍動へ。日本立て直しの国家ビジョン 教育再生 国民が夢と希望を持てるメッセージを、子供達の将来のための教育改革を」。私が住んでいる地域の自民党衆議院議員のポスターのことばだ。なるほど、日本は立て直しが必要で、停滞していて躍動させないとならない。教育は、国民に夢も希望も与えていない。
いったい、どの口がいうのか。これらすべてはほぼ戦後一貫して行政権を握ってきた自民党の悪政の結果ではないのか。有権者もいいかげん浮いたことばにだまされないようにしなければならない。対抗する野党は経団連の横暴を許さないくらいの標語を掲げたらいかがか。
(黒田 貴史)
▶ 知識・経験共にゼロながら15号以来当サイトの制作に従事。前任S氏のマネを続けながら分進秒歩のIT技術の発展からひたすら目をそむけ、「うどんとウェブは手打ちが一番」とうそぶきつつやってまいりました。加齢と共に慢性酒精中毒的症状が亢進する毎日ではありますが、”死ぬまで生きたる”と「頑張らない」ことをボチボチと頑張ります。読者諸兄・関係者諸氏に多謝。
(北川 徹)
▶ 本号特集は「混濁の状況を見る視角」とした。ロシアのウクライナ侵略・戦争に続きまたもやパレスチナ×イスラエル戦争の勃発。イスラエルの人道無視の侵攻に心が痛む。歴史は繰り返す。相も変わらぬアメリカのダブルスタンダード。これもまた変わらぬアメリカの腰ぎんちゃくの日本。アラブ世界とそれなりに良好な歴史を持つ日本。停戦へ独自の努力すらできない岸田政権とは何か。自民党内からも批判に晒される岸田総理。スローガンの連呼でこの難局は乗り切れない。このままでは歴史の片隅にも語られない総理になってしまうぞ。「宏池会」の先輩が草葉の陰で泣いているのではないか。本号も多彩な皆さんに寄稿願った、感謝です。
▶ 混濁の日本政治をみるに、その大きな要因の一つは日本維新の会であろう。しばらく前に解散・総選挙があれば一人勝ちではと巷間語られていた。この維新こそ「鵺(ぬえ)的存在」の政党と言わざるを得ない。馬場代表が「第二自民党で結構」と本音で居直って馬脚を現したが、思うに維新は自民党より悪く・危険な存在である(委細はこの間、連続執筆頂いている水野博達論稿で)。以前、辻元清美さんが鈴木宗男氏に対して国会で「疑惑のデパート」と追求したが、その宗男氏、やはり最近もロシア絡みで「除名×離党」騒動をやらかす。この一戦は手練手管の宗男氏の判定勝ちか。それにしてもこの維新、不祥事のオンパレード。政治資金規正法違反は序の口、パワハラにセクハラ、さらに刑事事件案件まで多発。一体何件になるか、両手の指ではとてもとても数えきれない。このおぞましい維新の実態を、”維新への忖度が過ぎる”と指弾される関西のメディア。汚名挽回へしっかり報道せよと言いたい。
同時に、自民党や公明党の支持者で無い有権者がどこに投票するか、維新は良しも悪しきもその良識を測る”リトマス紙”かも知れない。やはり私たち自身が問われている。さらにこの状況にかぶさるように、国民民主の自民党への急接近。元国民民主・矢田稚子前参議院議員(松下電器労組出身・電機連合組織内議員)の総理補佐官への就任、これには正直驚いた。維新と国民民主で自民との距離を競うのか。これまた自民党の“下駄の雪”と揶揄された公明党はどうする。
▶ アメリカやヨーロッパでは労働者が立ち上がりストライキが増えている。社会の右傾化に対抗するかのようだ。インフレへの生活防衛で労働者の権利行使だ。我が日本、どうなっているのか。この間、アマゾンなどユニオン系労組の奮闘が話題となっているが少数。今の日本の勤労者で、自らの生活賃金や権利をかけてのストライキを経験した労働者の数は本当に少数である。その中央団体・連合は “黄昏の連合”と揶揄されて久しい。しかし、賃上げ・権利問題、戦争反対・平和と民主主義を守る、現代的な非正規労働者問題、どれを取ってみても連合の課題と役割は重い。奮起を期待するしかない。今号も早川行雄さんが鋭い問題提起。(矢代 俊三)
季刊『現代の理論』[vol.36]2023年秋号
(デジタル36号―通刊65号<第3次『現代の理論』2004年10月創刊>)
2023年11月4日(土)発行
編集人/代表編集委員 住沢博紀/千本秀樹
発行人/現代の理論編集委員会
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