特集 ●総選挙 結果と展望

政治における「女性活躍」を考える

2021年自民党総裁選と衆議院選挙から

東海大学教授 辻 由希

はじめに

この秋、政治における女性活躍について考えさせられる二つの選挙があった。

まず、衆議院選挙を目前にして実施された2021年9月の自民党総裁選は、4名の候補者のうち女性が2人という構図が注目された。結果としては1回目の投票で高市早苗は3位、野田聖子は4位に終わり、決選投票には進めなかったとはいえ、総裁選以前の党内での位置付けからするとそれぞれ善戦したといえる。とくに高市早苗は、安倍晋三の口添えがあったとはいえ、初の総裁選で一気に知名度があがり、将来の総裁候補の一人としてのポジションを党内で獲得したように思われる。女性である高市が(一般的な「女性」イメージを裏切る)右派の政策・思想的立場であることも注目された要因であろう。

もう一つは衆議院選挙である。政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)が2018年に施行されて初めての衆議院選挙となり女性候補者の増加が期待されていたが、結果は前回と変わらなかった(下表)。

表:第49回衆議院選挙における各党の女性候補者数

主要政党(略称)女性候補者数(%)
自民党33 (9.8)
公明党4 (7.5)
立憲民主党44 (18.3)
国民民主党8 (29.6)
社民党9 (60.0)
共産党46 (35.4)
日本維新の会14 (14.6)
れいわ新選組5 (23.8)
NHK党10 (33.3)

日本がジェンダー・ギャップの世界ランキングで低迷を続けていることもあり、メディアの報道や世論からの女性候補者・議員の増加を求める圧力は高まっているが、政党側の動きはにぶい。政党側の言い訳は主に2つあり、一つ目はすでに議席を得ている現職の男性をおろして新人女性を擁立することはできないという「現職優先」の原則で、二つ目は公募や党から声をかけても女性はなかなか応じてくれないという「手を挙げる女性がいない」説である。しかし同じような言い訳をしていた民間企業に対しては、第二次安倍政権のときに制定した女性活躍推進法で、管理職の女性比率等の数値目標を義務付けている。民間企業に対しては反発を受けても義務化したのに、政党は数値目標も掲げないというのは、なかなか容認しがたい。

また、選挙公示前のできごとで興味深かったのは政党の候補者調整をめぐるあつれきである。自民党でも、山口3区や群馬1区では現職(小選挙区議席保持者)がいたのに、現職ではない候補が公認を得た。現職優先だから女性候補者を増やせないというのは都合の良い言い訳に過ぎないことは、この例から明らかである。

野党側も、野党共闘のための候補者調整に苦労した。公示直前にトラブルが表面化したのが、東京8区である。立憲民主党から吉田晴美が立候補するつもりで選挙区活動を続けており、野党間の候補者調整も進んでいたなかで突然、れいわ新選組の山本太郎が立候補するとアナウンスしたことで、混乱が生じた。

前々から東京8区からの出馬を希望する山本と立憲民主党の幹部が秘密裏に交渉を進め、山本の認識では合意に至っていたようだが、立憲民主党の執行部から選挙区組織への説明は無かったようだ。吉田の活動を支えてきた支援者から両党執行部への不満の声があがり、街頭行動に至ったことで山本が8区からの出馬を撤回し、比例ブロックにまわることで騒動を収めた。これは政党間をまたぐ候補者選定における、党の中央と選挙区レベルの権限配分という問題が表面化した例といえる。

本稿では、この自民党総裁選と衆議院総選挙を事例にして、政党における「女性活躍」を検討していくが、その際の視点として、政党の党内制度における集権と分権のバランスに注目する。そのうえで、海外の政党が行っている女性候補者を増やすための工夫をいくつか紹介する。

1.自民党総裁選

9月に行われた自民党の総裁選には、野田聖子、高市早苗という二人の女性議員が立候補した。

自民党は従来から、そのときの政局や政治環境に応じて総裁選の位置付けを変え、戦略的に使ってきた。2012年から2020年まで続いた第二次安倍政権のもとでは対立候補の出馬を抑えようとする執行部からの圧力があり、実質的には総裁選は機能していなかった。2015年には野田聖子が出馬を模索したが、執行部の「引きはがし」で20名の推薦者を集められずに断念していた。

それに対して今回の自民党総裁選は、衆議院総選挙を念頭において党の「顔」となるリーダーを選ぶ選挙となった。菅義偉内閣への支持率が低迷していたことから、国民に対して自民党のイメージ刷新をはかる手段として総裁選が使われたといえよう。菅政権はコロナ禍で国民とのコミュニケーションがうまくいかず支持率低下につながったという反省もあり、総裁選にはそれを挽回する意味が込められていた。

つまり今回の総裁選は、投票権をもつ党所属議員と党員からの支持獲得のみならず、国民・有権者一般に向けた広報という側面もあった。その目的からすると、4名中2名が女性であったこと、4名それぞれに政策や個性が異なる候補者が出て自民党の多様性を示せたこと、twitterを駆使して若者に抜群の知名度を誇る河野太郎が出たことで若年層にもアピールできたことなど、自民党全体として成功した総裁選であったといえそうだ。

総裁選に2名の女性が立候補したことはどういうインパクトをもつだろうか。女性政治家の効果に関する海外の研究では、ロール・モデル効果、議題設定の変化、女性のなかの多様性の表現などにおける効果があると報告されている。

第一はロール・モデル効果である。たとえばアメリカでは、有力な女性政治家(候補者)が登場するとマスメディアの報道が増え、そのニュースを視聴した女子がいる家庭で政治に関する会話が増え、その結果として女子の政治参加意識が高まったという調査結果がある。総裁選で女性候補者が対等に政策を議論する姿がテレビやネットのニュースでたくさん報道されたことは、日本の次世代の政治意識を変える効果をもつかもしれない。

第二に、女性政治家が増えたことで新しい議題が議会で取り上げられるようになったという変化を指摘する研究がある。今回の総裁選の候補者討論でも、選択的夫婦別姓制度や同性婚などジェンダー、セクシュアリティに関わる法制度が争点として注目された。野田と高市が明確に異なる立場をとったこともこの争点へのメディアの注目を高める効果をもった。

第三に、女性が増えることで、女性からも多様な意見が表明され、それが政策論争を豊かにするという指摘がある。選択的夫婦別姓制度の導入に反対する高市は、女性だからこそ男性候補以上に説明を求められた印象がある(それ自体はアンフェアであるともいえる)。高市の選択的夫婦別姓への反対が高市自身の信念によるものか、保守系の支持基盤を固めたいという意図によるものかは分からないが、世論調査でも近年賛成派が増えているとはいえまだ女性=100%賛成とはなっていないのだから、高市はその立場を代表したと見ることもできる。女性のなかにも多様な立場があることは、女性政治家が増えることで可視化されるのだ。

2.総裁選と候補者選定:党内制度の集権性と分権性

一般に、政党の機能として、(1)社会に存在する多様な利益を集約し、表出する機能、(2)政治家(候補)をリクルートし、養成する機能、(3)議会で多数派を形成し、政権を運営する機能がある。そのような機能を果たすために、政党には候補者選定、党の政策決定、議員・職員やスタッフの昇進・定年、党首選出手続きなど各種の制度が存在する。政党の組織は大きく院内政党(議員団)と院外政党(党員、活動家)に分けられ、党ごとにそれぞれの権限分担は異なる。「政党組織は分権的要素と集権的要素を組み合わせて、リーダーの裁量を許容しながら下位メンバーの不満を抑える運営を行うのが一般的」であるとされる(前田幸男・堤英敬編著『統治の条件―民主党に見る政権運営と党内統治』千倉書房、2015、17ページ)。

さまざまな機能を果たすことが求められる政党は、いくつかのジレンマを抱えている。たとえば、候補者選定や政策決定にあたり、議員と党員・活動家の間で選好が異なる場合や、議員のなかでも執行部と一般議員や、国会議員と地方議員の間に選好の違いが生じることがある。

いわゆる党内民主主義(intra-party democracy)を重視する場合は、分権的な傾向が強くなる。たとえば候補者の選定において党員・活動家が大きな権限を持ち、党の役職・政策や組織・規定の改廃についても全国から党員の代表(代議員)が集まる党大会で審議し、決定するというプロセスが重視されることになる。

しかし、このように党員・活動家からのボトムアップで集約された選好が、議員団、とくに党執行部の選好とは異なる場合がある。選挙の審判を受ける議員や政権獲得の戦略を描く執行部は、党員以外の(ゆるやかな)支持層や一般有権者の選好も考慮に入れなければならない。党員や熱心な党活動家はゆるい支持層や無党派層よりも極端なイデオロギーをもつことが多いとすれば、前者の選好に沿った公約や候補者を選ぶと、選挙ではあまり票数が稼げないかもしれない。つまり、党内民主主義の強さが(議会制民主主義における)政党間競争において不利に働く局面が生じうる。

このような選好の相違があらわれがちな例の1つが、自民党の総裁選である。自民党の総裁選では、党の国会議員の選好が結果に反映される仕組みになっている。まず総裁選の候補者になるには、自民党所属の国会議員20名の推薦人を集めなければならない。党員または一般国民から人気が高くても、国会議員の推薦人がいなければそもそも立候補できない。

党員投票を含めた「フルスペック」で実施される総裁選では、一人一票をもつ国会議員(議員票)と都道府県に配分される党員票の重みをどうするかはその都度決められる(なお国会議員投票のみの「簡易方式」で総裁選が実施される場合もある。菅義偉が総裁に選出された時はこの方式であった)。安倍晋三が総裁に返り咲いた2012年の総裁選は国会議員票198に対し、都道府県の配分票(党員票)300であった。

それに対して今回の総裁選は、国会議員票382、党員票382で同数であった。さらに1回目で過半数を得る候補者が出なかった場合は、2回目の決選投票へと進み、国会議員のみの投票によって総裁が選出される。明確な後継者がいない状態で実施された2012年と2021年の総裁選ではどちらも、党員票1位と国会議員票1位の候補者が異なった結果、党員票1位の候補者は総裁になれなかった。このような方式は一般党員の党へのロイヤリティを低下させるリスクがある。

候補者選定についても、選挙区の党組織や党員と、党執行部の間の権限のバランスをどうするかという問題を常にはらんでいる。党として女性やマイノリティの候補者率を上げようとすれば、候補者選定の権限を党執行部に集中するほうが早いし簡単である。拘束名簿式の比例代表制度を採用している国で、性別クオータ制が導入しやすく効果も出やすいのはこのためである。それに対して小選挙区・多数代表制をとる国は、候補者選定の権限が選挙区の党組織にあることが多い。選挙区の党員・党活動家の支持が得られなければ選挙運動で協力を得られない。

そもそも小選挙区制では一人だけが議席を得るので、議会に地域の代表を送り込むという発想となりがちで、党全体としての候補者属性のバランスよりも地域利益の代表という面が優先されやすい(すなわち小選挙区制は地域クオータであるとスティール若希は喝破している。スティール若希「多様な政治的アイデンティティとクオータ制の広がり」、三浦まり・衛藤幹子編著『ジェンダー・クォータ 世界の女性議員はなぜ増えたのか』明石書店、2014年)。したがって、分権的な党内民主主義が女性・マイノリティ候補者の増加にとってハードルとなる傾向がある。

とはいえ、東京8区の例は、選挙区では女性を擁立していたのに党の上層部が辞退させようとしたケースなので、話は逆である。選挙区レベルの党員・組織に女性候補者を増やそうという機運があるならば、分権的な候補者選定制度は女性候補者の増加を後押しする。(したがって自民党で女性候補者が増えないのは、地方の党組織にその機運がないためと言える。)

3.女性候補者を増やす:台湾とカナダの政党の例

世界の国々で女性議員を増やすための工夫が行われている。法律でクオータ制度を導入している国もあるが、それがなくても政党の努力で女性候補者が増えているケースもある。

ここでは、筆者がヒアリング調査したことがある台湾とカナダのケースを紹介する。

台湾:予備選挙における世論調査の活用

台湾は、アジア諸国のなかでは目立って女性議員率が高い。2020年1月の選挙では、日本の国会にあたる立法院の女性議員率は40%を超えた。理由の1つは憲法で性別クオータが規定されていることと、国民党と民進党の間で定期的に政権交代が生じたことである。これによって主要政党は競って女性候補者を増やしてきた。

小選挙区比例代表並立制をとる台湾は、2005年に比例代表議席のうち50%を女性に割り当てる性別クオータ制を採用した。比例代表議席は全議席のうち30%なので、クオータ制により15%の議席が女性に保障されたわけだが、制度改正時点で女性議員率はすでに20%を超えていた。クオータがない小選挙区でも女性議員が増えており、2020年の選挙では小選挙区と先住民選挙区の当選者のうち35.4%が女性であった。

台湾において女性議員が増えた要因として重要なのは、地方議会でクオータ制が導入されたことにより女性地方議員が増え、国政選挙の人材プールが拡大したことと、政党が候補者選定にあたり予備選挙を活用することである(辻由希「台湾における女性議員の持続的増加の要因-2016年台北市でのヒアリング調査から-」、『東海大学政治経済学部紀要』第48号、2016年)。

台湾の予備選挙は興味深い。国民党、民進党ともに現在は総裁の選出も、選挙区の公認候補者の決定にも予備選挙を活用している。新人であっても、予備選挙に名乗りをあげて公正な条件で公認を争うことができる。現職議員であっても挑戦者がいれば予備選挙に挑まなければないし、予備選挙で負けるケースも珍しくない。

台湾の予備選挙でさらに興味深いのは、党員投票ではなく、政党が委託した調査会社による世論調査が用いられることである。つまり同じ政党の党員ではなく、選挙区からランダムに選出された一般有権者からの評価によって候補者が決まる。これによって政党の地方組織の幹部(地方ボス)のコントロールは効かなくなった。党員による予備選挙ならば、よっぽど熱心な党員や活動家以外はあまり投票しないので、地方政党組織の幹部(地方ボス)による票まとめが効く。

それに対して世論調査は有権者一般からランダムに選ばれた人が回答するので地方ボスの「にらみ」は効かない。また政党にとっても実際の選挙で勝つ見込みがある候補者を選ぶことができるというメリットがある。このように非常に分権的というか開放的な候補者選定方式を採用したことが、男性・中高年の現職候補者から女性・若年層の新人候補者への交代を促してきた。

カナダ:候補者選定におけるルール

カナダの連邦議会(下院)は完全小選挙区制で、法律によるクオータ制はない。自由党と保守党とが政権を争い、それ以外に新民主党、緑の党、ブロック・ケベコワが存在する。小選挙区制ということもあって女性議員の増加スピードは遅めだが、2019年総選挙で女性議員率29%、2021年総選挙で30%となった。

完全小選挙区制をとっていることと、カナダの国土が広大で、民族的・言語的に多様な人口構成であることから、候補者を選ぶ際にはどうしても選挙区レベルの政党組織(党員・活動家)の発言権が強くならざるを得ない。つまり候補者選定の分権性という大きな前提があるなかで、政党はどのように女性・マイノリティ候補を増やしてきたのだろうか。

近年はどの政党も女性候補者率をアップさせているが、カナダの政党のなかで早くから自発的に党内クオータを導入したのは新民主党である(以下の記述は、『令和元年度諸外国における政治分野への女性の参画に関する調査研究報告書』内閣府男女共同参画局、「Ⅲ―2.カナダの事例」(辻が調査および執筆を担当)の一部を抜粋・要約)。

新民主党は社会民主主義を掲げる政党で、連邦レベルで政権をとったことはないが、2011年総選挙では議席を増やして野党第一党となったり、州レベルではブリティッシュ・コロンビア州やオンタリオ州などで政権与党となった経験もあり、カナダ政治において一定の存在感を示してきた政党である。1982年に制定されたカナダ憲法には、性別だけでなく人種、出身国や民族的出自、肌の色、宗教、年齢や障害に基づく差別禁止を定めた平等権規定がある。新民主党も、女性だけではなくマイノリティの候補者も増やすべく数値目標を設定している。

たとえば2019年総選挙にあたり、新民主党は次のような目標値を定めた。(1)全選挙区の50%以上で女性または性的マイノリティの候補者を擁立する、(2)勝てる見込みが十分にある選挙区の60%以上に女性または性的マイノリティの候補者を擁立する、(3)勝てる見込みが十分にある選挙区の30%以上に、カナダの多様性を反映し公正を求めるグループに属する候補者を擁立する、(4)新民主党の現職が引退する選挙区ではとくに、公正を求めるグループの候補者を擁立できるように特別の配慮を行う。ここでいう「公正を求めるグループ」とは議会で過少代表になっている集団のことで、女性、性的マイノリティ、障がい者、人種的マイノリティ、先住民、26歳以下の若者が含まれる。

そしてこの数値目標を達成するために、党は候補者指名規則を改正してきた。ポイントは、選挙区で公認候補者を決定するにあたり、選考対象となる候補者リストに女性やマイノリティの候補者が少なくとも一人は含まれるように求めている。

具体的には、次のような手続きが定められた。まず選挙区の組織は、党本部の委員会の許可がなければ候補者選定集会を開催することはできない。党本部から開催許可を得るためには、(1)選挙区の多様性を反映した候補者募集委員会が設置され、(2)妥当な候補者探しが行われ、(3)候補者リストのうち1人以上が公正を求めるグループに属する者である必要がある。どうしても(3)の条件が満たされない場合は、選挙区で女性やマイノリティ候補者を探す努力を行ったことを記録し、党本部に示す必要がある。つまり、党の公認候補者を選ぶ権限は選挙区の党組織・党員にあるが、選ぶ前に本気で女性・マイノリティ集団から人材を探す努力をするという責任も地方組織にあるわけである。

このような努力の結果、新民主党の女性候補者率は2015年に43.2%、2019年には48.5%、2021年には51.8%と増え、男女均等を達成した(新民主党の当選者に占める女性率は2021年で44%)。ただこのルールは選挙区組織にとってかなり負担が重いことも確かであり、選挙が近づいてもなかなか公認候補者が決まらず、選挙活動に支障がでるケースもある。

おわりに

日本でも2018年5月に、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が成立した。各種議会選挙において「男女の候補者の数ができる限り均等となること」を目指すことや、政党その他の政治団体は「男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定める等、自主的に取り組むよう努めるものとする」ことが明記された。この法律は理念法であり罰則などの強制力はないものの、男女候補者の数を同じにするための政党の努力を求めたのは画期的である。この法案を立案し、成立に尽力したのは2015年に超党派議員で結成された「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」(会長:中川正春、幹事長:野田聖子、事務局長:行田邦子)であり、それを市民側からバックアップし、院内集会やロビイング活動を展開したのはQの会というクオータ制の導入を求める運動団体(代表:赤松良子)であった。

しかし、10月19日に公示された第49回衆議院総選挙では、各政党の女性候補者率は前回とあまり変わらなかった。たとえば立憲民主党は、男女半々の議会「パリテ」の実現を目指すと宣言し、女性候補者の発掘、ハラスメント防止、選挙資金の支援、メンター制度などを設けている。しかし、立憲民主党が擁立した240名の候補者のうち、女性は44名(18.3%)にとどまっている(前回の2017年総選挙では78名の候補者のうち女性が19名(24.3%)だった)。候補者の男女同数までの道のりは長い。

各政党は、現職優先の原則と女性に声をかけても断られるために増やせないと言い訳をしているが、小選挙区制度を採用している他の国の政党はさまざまな工夫を行って女性を増やしてきている。日本では男性の国会議員についても、世襲や東大卒・官僚出身など、バックグラウンドの偏りが顕著である。女性の候補者を増やすための工夫は、男性候補者の多様性を増やすことにもつながるはずだ。そのような観点から、政党は候補者選定手続きを見直すべきである。

つじ・ゆき

奈良県出身、京都大学大学院法学研究科修了。東海大学政治経済学部教授。専門分野はジェンダー政治論、福祉国家論。著書に『家族主義福祉レジームの再編とジェンダー政治』(2012年、ミネルヴァ書房)、論文に「自民党の女性たちのサブカルチャー-月刊女性誌『りぶる』を手がかりに-」(田村哲樹(編)『日常生活と政治-国家中心的政治像の再検討』岩波書店、6章)、「女性首長のキャリアパスと政策」『都市問題』110巻(2019年1月)など。

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