特集 ●総選挙 結果と展望
合衆国vs.合州国の間隙突くトランプ「虚偽」戦略
米民主主義を守れるか、苦闘続くバイデン政権・民主党
国際問題ジャーナリスト 金子 敦郎
バイデン大統領・民主党が苦闘を続けている。たった2人の党内保守派の思わぬ造反で大統領、上・下両院の3権を掌握しながら、それが思うように使えずに重要政策の議会通過が難航している。「盗まれた選挙」を掲げて「政権奪還」を狙うトランプの「虚偽キャンペーン」が共和党支配を固め直して勢いを増しているのに、ここでも守勢に立たされている。分断はさらに深まっている。早くも1年後には中間選挙(連邦、州議会、知事選挙)が迫ってきた。これを乗り越えないと2024年総選挙(4年ごとの大統領選挙が加わる)が「米民主主義が死ぬとき?」(ニューヨーク・タイムズ紙)といった危機感が流れ始めている。
「フィリバスター」の壁
バイデン政権は、グローバリズムがもたらした貧富の格差とコロナ禍で疲弊した中産階級、低所得層を底上げしつつ経済再建を図ることと、政権奪還を狙うトランプ虚偽キャンペーンを封じ込めてトランプ再登板を阻止するという、絡み合った2つの重要かつ緊急の課題を抱えてスタートした。バイデンと民主党には上下両院の多数支配というカードがあった。バイデンには上院議員40年の議会政治のベテランという自負もあった。「トランプなき共和党」は正常に戻ると思っていた。これは甘い判断だったし、上下両院の多数支配にも思わぬ落とし穴が待っていた。
バイデンは就任早々、コロナ禍から立ち上がるための1.9兆ドル(200兆円)という超大型の緊急救援法案を成立させた。だが、共和党は「バイデンのすべて」に反対を宣言。上院には重要法案の成立には3分の2の賛成を必要とする独特の議事妨害ルール(フィリバスター)がある。これをかわすために民主党は各年度に1回だけ許されるフィリバスター適用外のルール(調停法案)を使った。
バイデンは続いて2兆ドル(210兆円)超の大型雇用創出計画(広義のインフラ投資)を提示、1932年のルーズベルト大統領の大恐慌対策「ニューディール」に例えられた。だが、共和党は「社会主義政策」と強く反発、民主党保守派と共和党穏健派との間で老朽化した道路、橋梁、鉄道、港湾、上下水道、電力など狭義のインフラ再建投資に絞ることで合意ができた。バイデンはこれをもとに超党派の形をとった1兆ドル(105兆円)の大型投資計画法案をまとめた。共和党上院から17人が賛成して 両院審議に回されることになった(「現代の理論27号」拙稿)。
「たった2人」の内なる反乱
バイデンは元の計画の残る1兆ドルの上に子育てにはじまる学校教育、職業教育の支援、AI・デジタル基盤整備、気候変動対応など社会生活・経済にわたる広義のインフラ投資を積み上げ、その財源は富裕層と企業の増税に求めるとする合計3.5兆ドル超に上る国家再建・発展法案(略称BBB法案)にまとめ上げた。リベラル派は喜んだ。バイデンも党もこれを次年度予算(2022年度)に組み込み、調停法案として両院の単純多数によって成立は約束されていると思った。
ところが党内保守派の2人、マンチン、シネマ両上院議員からは強硬な反対が出た。金額が大きすぎる、社会保障的な政策が強く出ている、財源を多額の増税に求めている、財政赤字がさらに膨らみインフレにつながる、などが理由だ。共和党の主張に重なるように見えるが、2人の政治的な立場は重なっているわけではなく、それぞれの反対はこれまでの保守対進歩・革新、右対左というパターンには合わない独得の発想からきていた。下院は小差ながら多数を握っているが(10あった議席差は欠員などで3に)、上院議席は50対50のタイで議長(ハリス副大統領)の1票による多数。2人の賛成票がないと「調停法案」の多数決でも共和党の反対で潰される。大統領と党を挙げての説得にも2人は頑として応じないまま、夏季休会をはさんで4カ月か過ぎ去った。
バイデンも党指導部もほとほと持てあまして、G20サミット(ローマ)および気候変動条約締結国会議(Cop26、グラスゴー)出席のために出発する直前の10月28日、バイデンが総額1.75兆ドルで合意したとあわただしく発表して旅立った。総額3.5兆ドルはマンチン主張通りに半額に。減額はまず実施期間10年をそれぞれの計画に応じて短縮。削除した個々のプログラムの詳細を取り上げる紙数はないが、子育てから職業教育までの一貫支援、オバマ医療保険の拡大、富裕層の増税、企業への新規課税、気候変動対策への投資などの骨格は維持している。
マンチンとシネマは協議が進展したと歓迎したが、これを受け入れるとは言っていない。党指導部はバイデン帰国後に決着をつけ、共和党の一部を取り込んだインフラ投資計画と合わせて2法案同時成立を目指している。マンチン、シネマ両議員に振りまわされた4カ月におよぶ党の混乱をバイデンと党の指導力不足とみるのか。苦しみはしたがグローバリズムにとって代わる新しい「大きな政府」の可能性へのチャレンジを「バイデン・ディール」と評価するのか。世論の受け止めが注目されるところだ。
付記――バイデンの判断で党は2法案の同時成立を断念。超党派インフラ投資法案は5日、下院で賛成が共和党13票を加えた228、反対206で成立。BBB法案は詰めの協議を経て15日からの週に上院採決となった(11月6日記)
「投票の自由」も2議員がカギ
トランプはホワイトハウスを去ってほどなく、2022年中間選挙から2024年総選挙へ向けて政権奪還に取り掛かったようだ。ひとつが接戦州を重点に2020年選挙で圧倒的に民主党を支持した黒人、ヒスパニック、先住民など少数派の投票率引き下げをねらう州選挙法の改変である。期日前および郵便投票の規制強化、投票所・投票函設置数の削減、身分証明書提示の厳格化など。米メディアによると、すでに共和党の強い19州で33法が成立している。
バイデン政権と民主党は正攻法で対応している。すべての有権者の投票の自由を保障し、投票率を高めるという包括的選挙法「国民のための選挙法」の制定だ。しかし、ここでも上院保守派が反対、マンチンと共和党穏健派との合意による超党派の「投票の自由法」がまとめられた。民主党は大きな譲歩を強いられるが、基本的な投票権の保障と選挙管理の中立性は守られているとして受けいれた。しかし、共和党指導部(背後にトランプ)は同案もフィリバスターで葬った(10月20日)。マンチンとともに法案合意に加わった共和党議員も反対に回った。
マンチンはフィリバスターを乗り越えるために共和党議員10人の賛成票獲得に奔走したが、全く受け入れられなかった。重要法案は超党派であるべきというのがマンチンの強固な主張だが、今の共和党には通じない現実を知ったようだと、変化を期待する報道も出ている。
民主党に残された手段は、フィリバスターを廃止し(単純多数で議決できる)、党本来の「国民のための選挙法」を成立させることしかない。マンチン、シネマ両議員がフィリバスター廃止反対を変えるか。「投票の自由」の行方も2人の決断にかかることになった。
ゲリマンダーの怖さ
「国民のための選挙法」にはゲリマンダーを許さないために選挙区の線引きに第3者の参加を求める提案が盛り込まれている。下院議員(連邦、州ともに)選出のための選挙区割りは10年ごとに実施される国勢調査による人口動態に応じ、州議会が線引きを調整することになっている。州議会多数を握った党が自党に有利な線引きを強行するのがゲリマンダー。オバマ政権登場で民主、共和両党対立が先鋭化した2010年中間選挙の連邦下院および州議会選挙で、共和党が南部や中西部で議席を伸ばし、この優位をゲリマンダーでさらに固めたとされる。現在、各州議会では2020年国勢調査の結果を受けて選挙区線引き修正が進められている。共和党多数の州議会は今、せっせとゲリマンダーに励んでいると報道されている。
ゲリマンダーで得た下院と州議会の優位は、次の国勢調査までの10年間は維持できる可能性を持っている。2020年選挙の結果による現在の州勢力バランスは、➀知事と上下両院支配が共和党23州、民主党15州、ねじれ12州、➁上院支配が共和党32州、民主党18州、➂下院は共和党30州、民主党19州(1州は対)、④知事は共和党27州、民主党23州―すべてで共和党がリードしている。共和党はそのうえにまた新たなゲリマンダーを積み上げ、これに州選挙法改変効果も加わるとすれば、2022年選挙で共和党が大きく議席を伸ばす可能性が高くなる。これで民主党の上下両院の多数支配のうち、下院は共和党に奪い返され、さらに現在同数の上院も失う可能性がある。
「州の権力」
トランプが共和党の州議会支配を広げようとしている理由はまだある。憲法に基づく米国の大統領選挙制度は独特で、現在の民主、共和両党の対立関係の下では共和党に有利で、特にトランプの「虚偽キャンペーン」がつけ入る隙間が空いているからだ。米国は大英帝国の下にあった13の植民地が集まって1つの国家として独立した。 各植民地は州と名を変えたものの、強い州権を手放さなかった。州はそれぞれ憲法を持ち、その下に立法、行政、司法の機能を備えている。その主要な役職は州民の選挙で選ばれる。
米国は日本では「合衆国」と訳されているが、独立後2世紀半経った今も「合州国」と呼ぶ方が実態に近いとよく言われる。代表的なのが選挙制度で、特に大統領瀬選挙制度である。民主、共和両党並立を前提にしていて、一般の有権者は投票に参加はするが、大統領を決める権限は各州を代表する大統領選挙人の投票である。その選挙人を選ぶのは州の民主、共和両党。選挙の結果を承認あるいは認証する手順は何段階もあり、これも州権力の下に置かれている。そこは民主、共和両党の政治の舞台でもあり、州政府の主要ポストや州議会議員を多く握った党が権力を享受することになる。このような州権力に対して、連邦政府は直接口出しはしにくいという現実がある。
「合衆国」と「合州国」の隙間
トランプは勝敗を分けた6つの接戦州ですべて敗れた。開票が終わらないうちに「不正投票」と叫んで、集計停止を要求するとともに、共和党員の州務長官、州選管委員、州知事、州議会上下両院議員にバイデン当選を承認しないよう圧力をかけた。
州議会共和党に選挙人差し替えも命じ、両院合同会議の議長を務めるペンス副大統領にバイデン当選をトランプ当選にすり替えるよう命じた。州裁判所、連邦裁判所、さらに最高裁に「選挙無効」を求める裁判を合わせて60件余り起こした。
これらは全て失敗に終った。各州の共和党指導部も根拠なく選挙結果の受け入れを拒否せよという前例のないトランプの「虚偽」キャンペーンには準備もなく、ついていけなかったからだろう。ある裁判長は提訴の態をなしていない訴訟権の乱用と、懲罰を科したケースが何件もあった。しかし、トランプは次の機会(2024年)にはもっと上手くやるだろう。
共和党が優位を握る州議会の数は増えている。トランプは一般投票で負けてもふたたび「不正選挙」と主張して、支配下においた州議会、州知事、選挙人らに選挙結果の承認拒否を指令する。これで憲法に決められた選挙日程は大混乱に陥る。どんな決着になるのか全く分からないが、米国の民主主義が死ぬかもしれなというのは決して杞憂ではなさそうだ。憲法にも選挙法にもこうした行為を許さないという定めも、罰則を課す決りもないからだ。トランンプは「するな」と書いてないことは「する」のではないだろうか。
この大統領選挙制度には、2億人にも迫る一般投票で敗れた敗者が、現在わずか583人の選挙人の投票で多数を得て大統領に当選するということが時々起こる。この異常事態は1980年代に2回、最近では2000年にゴア民主党候補が50万票多かったのにブッシュ共和党候補に敗れ、2016年にはクリントン民主党候補が286万票の大差をつけたトランプに敗北する結果になっている。これだけで米国は民主主義国ではないとする米ジャーナリストや学者は少なくない(米政治に詳しいクラウス・ロンドンカレッジ大准教授ら)。
「クーデター」のシナリオ明るみに
トランプの「虚偽」戦略をどう止めるのか。バイデン政権が苦吟する中で、1月の議事堂襲撃・占拠事件がバイデン当選をトランプ当選にすり替えようとした「クーデター未遂」だったことを示す事実が、調査報道や議会調査で次々に明らかになった。
ワシントン・ポスト紙ラッカー、レオニング両記者の『それをできるのは私しかいない(筆者仮訳)』(7月下旬発売)は1月6日に何が起きたかを知る立場にいた140人にインタビューした生々しいドキュメントである。その中で米軍制服組トップ、ミリー統合参謀本部議長はトランプが呼びかけている1月6日議事堂デモはヒトラーの政権奪取の歴史を想起させるとして、米軍は大統領個人の命令ではなく憲法に従うものであると軍首脳部に警戒を呼び掛けたと伝えている。本書の題名はそこからとってある。
歴代大統領と側近たちの政治・外交の舞台裏を描くドキュメンタリー・ジャーナリストとして知られるウッドワード氏とワシントン・ポスト紙コスタ記者が、トランプ政権からバイデン政権へのきわどい政権移行の流れをたどった新著 『Peril(危険)』 も追いかけて発売(9月21日)された。
同書は1月6日の上下両院議員合同会議で、議長を務めるペンス副大統領が「トランプ当選」を宣言するという議事運営の筋書きを描いた「イーストマン・メモ」(イーストマンは起草した大統領法律顧問の名前)の存在を報じた。
民主党系の政治学者や弁護士などが「イーストマン・メモ」に注目した。米国の憲法や大統領選挙関連法にはトランプが違憲、違法の追及をかわして政権奪取を可能にする隙間が広く空いてるので、トランプは次の選挙でもっとうまく悪用する恐れがあるとして、緊急に法的な対抗措置が必要と警告。ニューヨーク・タイムズ紙はこれを受けて「2024は米民主主義が死ぬときか?」という見出しの長文記事を掲載した(9月30日)。
米議会上院司法委員会の多数派の民主党委員が続いて、「イーストマン・メモ」 策定に至るトランプ大統領と側近たちの動きを詳述した報告を公表した(10月7日)。それによると、トランプは2020年末から翌21年1月6日の議事堂襲撃の直前まで、連日のように側近を集めた会議を開催、大統領選の結果をひっくり返す「逆転劇」のシナリオを練っていた。
1月2日の会議ではローゼン長官代行ら司法省幹部らを呼びつけて、「不正選挙」の捜査を何もしていないと叱責し、ローゼン氏らを解任して協力する人物に入れ替えると圧力をかけた。ローゼン氏らは省幹部が総辞職することになるだろうと、この計画にかかわることを断った。ローゼン氏らは2週間ほど前に、トランプの腹心と言われたバー司法長官が「不正はなかった」と公に発言して更迭された後にトランプから指名されたばかりだった。
これらを総合すると、イーストマン法律顧問(チャップマン大学教授)、ジリアーニ弁護士(元ニューヨーク州知事)、バノン元トランプ政権首席戦略官(白人至上主義者でトランプの長い友人)、トランプの2人の息子などがホワイトハウスに近いトランプ・インターナショナル・ホテルに陣取り、トランプとの間を往復して練り上げたのが「イーストマン・メモ」だった。
「異議申し立て」封じバイデン当選確認
同メモによれば、「バイデン当選」をひっくり返す工作が全て失敗した後、上下両院合同会議を最後のチャンスとして、議長を務めるペンス副大統領が議長専権を行使して選挙人投票を開封・集計して「トランプ当選」を宣言、直ちに閉会するというのがそのシナリオだった。しかし、保守派週刊誌ワシントン・インクワイアーからも重要な新事実が明らかにされた。ペンス副大統領がヤコブ首席顧問(ホワイトハウス法務局長から転じた)とショート首席補佐官(いずれも当時)から、憲法上は選挙人票を開封し、集計するのは議長1人の専権とするのは無理があり、出席議員全員の役割だと忠告された(ワシントン・ポスト紙電子版)。
ペンスは両院合同会議前夜の1月5日夜、トランプ・インターナショナル・ホテルにその旨連絡、翌朝トランプに呼び出されて「裏切り者」「勇気がない」と罵声を背に受けながら議事堂に向かった。トランプはそれでもホワイトハウス近くの広場に集まった支持者に演説、ペンス議長が「正しい仕事」をしようとしている、一緒に議事堂へ行こうと呼びかけた。ペンスがシナリオ通りに動くと信じていたようだ。支持者は議事堂へのデモ行使に出発した。
側近が「暴走」阻む?
両院合同会議は午後1時、デモ隊が続々と押し掛ける中で開会。ペンスは「憲法に従って議長を務める」と開会あいさつ。アルファベット順に選挙人票の開封・集計に入ってアリゾナ州の番がくると、トランプに近い複数の共和党議員が異議を申し立てた。共和党重鎮のマコネル上院院内総務が「憲法に従った議事を妨害することは許されない。敗れた側からの単なる言い分で当選者が引っくり返るならば、米国の民主主義は死への循環に陥る」と発言、トランプ派の異議を封じ込んだ。
武装デモが議事堂に乱入を開始、議会は中断。武装グループは口々に「ペンスを縛り首にしろ」と叫んで、探し回った。ペンスの「裏切り」をすでに知っていた。会議は中断、議員たちは秘密の避難部屋に難を避けたあと、翌日明け方までかけてバイデン当選を確認した。
注目されるのは、ラッカー、レオニング両記者がペンスの「裏切り」を個人プレーではなかったようだと伝えていることだ。トランプの長女イバンカ補佐官も加わった少数の側近グループも「イーストマン・メモ」のシナリオは無理と説得に努めたが、トランプの「暴走」を止められない。ペンス議長が土壇場で「憲法に従う」ことで計画を未遂に終わらせる(トランプを守る?)「陰謀」を仕組んでいたと推測はできる。ペンスはトランプに逆らって憲法を守った英雄との見方もあったが、そうではなかったことになる。
この真偽がどうあれ、ホワイトハウスと共和党に穏健派がいなくなって久しく、議員のほとんどがトランプにひれ伏している中で、ペンスもマコネルも強固な保守派。それでも同党幹部の間に「クーデター」までは支持せず、憲法は破れないとしたグループもいることが明らかになった。
「大統領の犯罪」はアンタッチャブル?
議事堂襲撃乱入・占拠について連邦捜査局(FBI)の捜査が進んで、極右、白人至上主義や陰謀論者の団体などのグループが暴力行為などの罪で起訴され、彼らを含めてデモ参加者の多くがトランプの指示、あるいは扇動で議事堂を襲ったと供述している。しかし、トランプが直接この「クーデター」にかかわったという証拠はつかみ切れていないようだ。
民主党サイドからは、トランプの指示あるいは関与は状況から明らかだし、接戦州の共和党指導者に「不正選挙」と認めろと圧力をかけた事実が数多く明らかになっているとして、司法当局にトランプ訴追を迫る声も強い。「イーストマン・メモ」報道からトランプの「クーデター計画」の存在が明るみに出て、上院司法委員会の調査とともに、下院の議事堂占拠事件調査特別委員会も「イーストマン・メモ」関係者に聴聞会出席と関連文書提出を求める召喚状を出すなど議会調査も進んでいる。
ガーランド司法長官はトランプ対民主党の対立が険悪化している中では「政治捜査」の批判に使われないよう慎重な姿勢をとってきた。しかし、いずれは前大統領とはいえアンタッチャブルではないと示すことが必要になるのではないだろうか。 (10月31日記)
かねこ・あつお
東京大学文学部卒。共同通信サイゴン支局長、ワシントン支局長、国際局長、常務理事歴任。大阪国際大学教授・学長を務める。専攻は米国外交、国際関係論、メディア論。著書に『国際報道最前線』(リベルタ出版)、『世界を不幸にする原爆カード』(明石書店)、『核と反核の70年―恐怖と幻影のゲームの終焉』(リベルタ出版、2015.8)など。現在、カンボジア教育支援基金会長。
特集/総選挙 結果と展望
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