連載●池明観日記─第33回(最終回)

池明観さんの連載の終わりにあたって

2017年5月10日発行の本誌第12号からはじまった「池明観日記 歴史哲学ノート」は、今回の33回で連載を終了します。この連載は、2008年12月から2014年10月まで、著者が折に触れて書きつづった現代史についてのノートです。著者の2017年の来日時に発表のしかたは任せるとの一言をいただき、原稿の束とやや不完全なデータをあずかりました。連載にあたっては、著者の修正がはいっていたプリントされた原稿を優先して作業をしています。

執筆当時、著者は米国で暮らしていました。「映画もこない田舎町」と映画好きの著者はぼやいていました。著者が暮らす町の教会の風景なども登場します。

関心事項は、韓国の現代史、政治、アメリカ社会、日本文化、キリスト教信仰に基づく歴史観など多岐にわたります。ノートの執筆時期は、米国はオバマ政権(2009-17)、韓国は2012年の朴槿恵と文在寅による大統領選挙を経て勝利した朴槿恵政権(2013-17)の時期にほぼ重なっています。

米国でマイノリティ出身の大統領が誕生する一方で、韓国ではかつての軍事独裁を想起させる大統領が誕生しています。米国については、米国の世界史的な位置づけ、役割についての記述がかなりの分量を占めています。他方で韓国の政治については保守と革新の両極に分裂する様子に対する不安や不信をつづっています。軍事独裁の記憶と結びつく朴槿恵政権以降に誕生する政権への期待をこめた部分も散見されます。朴槿恵大統領を弾劾に追いこんだローソクデモは、このノート執筆以降におきています。そうした韓国の民主主義への期待は、2017年9月に刊行された『韓国からの通信の時代』(影書房)のまえがきに触れられています。あわせてご覧ください。

日本については、政治よりも文化への関心がより多くの部分を占めています。日本の文学についての記述が多く、『叙情と愛国――韓国から見た近代日本の詩歌』(明石書店、2011)でまとめられた日本の詩歌や文学にかんする関心を引きつづきもちつづけていたことがよくわかります。

著者をよく知る読者の一人からは、通常の著作では文字にはならない思考の枝葉まで読むことができて興味深いという感想をいただきました。

今後、本格的にはじめられるであろう池明観さんの研究の一助になれば幸いに存じます。長らくご愛読いただき、ありがとうございました。

(本誌編集委員・黒田貴史)

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