論壇

歴史的な大阪朝鮮学校への無償化勝訴判決

戦後初めて司法が国の差別行政を糺す

弁護団長 丹羽 雅雄

はじめに

現在、高校無償化裁判は、東京、愛知、大阪、広島、福岡の全国5か所で争われている。このうち、2017年7月19日での広島地裁での裁判(原告は学園と生徒らで行政訴訟と国賠請求)は、原告広島朝鮮学園の完全敗訴(現在学園は控訴)となり、大阪朝鮮学園の裁判(行政訴訟)は完全勝訴(国は同年8月10日付で控訴)となった。東京の裁判(原告生徒らの国賠請求)は、本年9月13日に判決が言い渡され、原告敗訴となった。愛知及び福岡の裁判(いずれも原告生徒らの国賠請求)は、訴訟継続中である。

1.大阪地方裁判所の第2民事部の判決結果

2017年7月28日午前11時、大阪地方裁判所第2民事部(西田隆裕裁判長)は、文部科学大臣が原告(学校法人大阪朝鮮学園)に対して2013年2月20日付けでした不指定処分に対して、「法律施行規則1条1項2号ハの規定に基づく指定をしない旨の処分を取り消す、文部科学大臣は、原告に対し、法律施行規則1条1項2号ハの規定に基づく指定をせよ」との原告全面勝訴の判決をした。

この原告全面勝訴判決は、戦後初めて、司法が良心と法の支配に基づいて、日本国(安倍政権)の差別行政を糾し、国に対して、大阪朝鮮学園への指定を義務付け、生徒達に就学支援金を支給するよう命じた画期的な判決であり、民族教育の重要な意義と朝鮮総聯の民族教育への協力関係の歴史的役割をも判示した歴史的勝訴判決であった。

2.高校無償化法施行に至る経緯

1 2010(平成22)年1月、鳩山由起夫元首相は、衆議院本会議における施政方針演説において、「全ての意志ある若者が教育を受けられるよう、高校の実質無償化を開始します。国際人権規約における高等教育の段階的な無償化条項についても、その留保撤回を具体的な目標とし、教育の格差をなくすための検討を進めます。」と述べた。

2 2009年12月、2010年1月、3月、在特会による京都朝鮮初級学校襲撃事件発生。

3 2010年2月21日、中井拉致問題担当大臣、拉致問題より無償化の対象から外すことを川端文科大臣に要請する。

4 同年2月23日、産経新聞「朝鮮学校無償化除外へ知恵を絞れ」(主張)

5 同年3月12日、大阪府橋下知事「北朝鮮は拉致問題を抱える不法国家、暴力団と基本的に一緒」と発言し、新たな4要件を提示。

3.高校無償化法の構造と不指定処分の経緯

1 高校無償化法の制定
 2010(平成22)年3月31日、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(以下「高校無償化法」という。)が成立し、同年4月1日に施行された。同法の目的は、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与すること」(第1条)にある。高校無償化法は、戦後初めて各種学校に位置付けられていた外国人学校に通う生徒にも平等に就学支援金を支給するという画期的な制度であった。

2 高校無償化法は、専修学校及び各種学校については、「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」と規定している(法第2条1項5号)。同法施行日に策定された文部科学省令(2010年4月1日付法律施行規則)第1条1項2号では、各種学校である外国人学校を、(イ)外国の学校課程と同様の課程 (ロ)文科大臣が指定する団体の認定による指定 (ハ)文科大臣が定めるところにより高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文科大臣が指定したものと規定している。  そして、同4月30日、省令(イ)(ロ)に基づいて計31校が指定された。

同5月26日、文部科学大臣は、「高等学校就学支援金の支給に関する検討会議」を設置し、同8月30日、「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について」という報告を行なった。同報告においては、「外国人学校の指定については、外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきであるということが法案審議の過程で明らかにされた政府の統一的見解である。このため、審査は、教育制度の専門家をはじめとする第三者が、専門的な見地から客観的に行い、対象とするかどうかについて意見を取りまとめ、最終的には、文部科学大臣の権限と責任において、外国人学校の指定がなされることが適当である」とされた。

3 本件規程(省令からの委任)
 検討会議報告を受けて、2010(平成22)年11月5日、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」が定められた。本件規程は、省令ハに基づく指定の基準と指定の手続等を定めている。

4 大阪朝鮮学園は、2010年11月27日付で、学園が運営する大阪朝鮮高級学校が就学支援金支給対象校として省令(ハ)の指定を受けるための申請を行った。ところが文部科学大臣は、同11月25日、その直前に朝鮮半島で発生した砲撃事件と関連して審査手続きを停止させた。その間、原告学園と同じ手続きによって申請した他2校については対象校として指定を受けている。その後、2011年8月29日、菅元首相によって停止解除がなされたが、朝鮮学校に対する審査が開始された後も延々と審査結果が出ない事態が続いた。

5 本訴の提起及び不指定処分
 申請から2年以上も結果が出ず、大阪朝鮮高級学校に通う生徒たちが就学支援金の支給を受けられない状態が続いていたところ、2012年12月26日、第二次安倍政権が誕生し、同12月28日、下村博文文科大臣は記者会見において、「朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと、朝鮮総聯と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいること等から、現時点での指定には国民の理解が得られない」として、省令ハ削除のパブコメを始めた。大阪朝鮮学園は、2013年1月24日、不作為違法確認及び指定の義務付け訴訟を提訴したが、2013年2月20日、下村文科大臣は、大阪朝鮮学園に対して、「ハの規定を削除したこと及び規程第13条に適合すると認めるに至らなかった」との理由によって不指定処分を行った。そこで大阪朝鮮学園は、請求の趣旨を、処分の取り消し及び指定の義務付けに変更した。

4.大阪地方裁判所第2民事部(西田隆裕裁判長)の判決(2017.7.28)の概要

1 原告学園と被告国とで争われた争点は多岐に及ぶが、大阪地裁は、次の争点1及び2、8を中心に判断した。

2 本件規定(省令ハ)削除の違法性の有無について(争点1)
(1)法の趣旨・目的は、経済的負担の軽減を図り、もって後期中等教育段階における教育の機会均等に寄与することを目的とする。対象範囲をどのように定めるかについては、専門的、技術的な観点からの一定の裁量権が認められるものの、省令の制定は、委任の趣旨を逸脱しない範囲内においてのみ許されるとし、「高等学校の課程に類する課程を置く」各種学校を適用対象とする。

(2)省令ハ削除が委任の趣旨を逸脱しているか否か
 「支給法2条1項5号は、国の財政的負担において教育を実施することが 後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校の範囲の確定を文部科学省令に委任しているにもかかわらず、下村文科大臣は、後期中等教育段階の教育の機会均等の確保とは無関係な外交的、政治的判断に基づいて本件省令を制定(改訂)して本件規定を削除したものというべきであるから、下村文科大臣が本件省令を制定(改訂)して本件規定を削除したことは同号による委任の趣旨を逸脱するものとして違法、無効と解すべきである。」

3 原告の本件規程13条適合性について(争点2)
 裁判所は、省令(イ)(ロ)は、一定の類型の各種学校であり、省令(ハ)は、「文科大臣が定めるところにより・・・指定したもの」で包括的規定であるとし、「各種学校の個別具体的な事情を踏まえた教育上の観点から専門的、技術的検討を要するから、その検討をすることができる文科大臣の指定に基づくとともに、基準設定も大臣に委任しており、指定基準は、規定(省令)の委任の趣旨を逸脱しない範囲において、文科大臣に一定の裁量権が認められる。」とした。そして、規程13条の①就学支援金を生徒等の授業料に係る債権の弁済に確実に充当すること ②法令に基づく適正な学校運営が行われていることの基準は、いずれも合理性が認められ、遵守すべき法令には各種学校に適用される教育関係法令が全て含まれ、教育基本法16条1項も含まれるとした。

4 大阪朝鮮高級学校の規程13条適合性について
(1)指定を受けると設置者は就学支援金を収受することができる地位を取得することになり、この性質から、規程13条の要件該当性については原告が主張立証責任を負うとし、原告は、財務諸表等作成、理事会等開催、大阪府知事の立入検査においても法令違反の行政処分等を行わなかったと主張立証している。大阪朝鮮高級学校については、他に規程13条適合性に疑念を生じさせる特段の事情のない限り、同上適合性は認められるというべきであるとした。

(2)国は、教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無について、文科大臣に裁量があることを前提に疑念が生じると判断し、「認めるに至らない」とした裁量権の逸脱・濫用はないと主張する。そこで、国が主張した国内外の新聞報道等による規程13条①及び②の疑念に対しては、「特段の事情」の存否について判断すべきことになるとした。

「①債権の弁済に確実に充当されるか否かの判断に文科大臣の裁量が認められるか」については、ア 文字が概括的抽象的なものではないこと イ 財務状況、財産管理状況等に照らして客観的に認定され得るものであり、教育上の観点からの専門的、技術的判断を要するものでないこと ウ 支給法は、生徒等の受給権として規定(12条)しており、司法的救済の要請は高いというべきであるとして、文科大臣の裁量権が認められるものと解することはできないと判示した。

「②法令に基づく適正な運営―教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無の判断に文科大臣の裁量が認められるか」については、教育への関与等の行為が同項「不当な支配」に該当するか否かは、教育の自主性を侵害するものか否かによって客観的に判断され得るものであり、必ずしも教育上の観点から専門的、技術的判断を要するものではない。また、旧教育基本法及び教育基本法は、戦前の我が国の教育が国家による強い支配下で形式的、画一的に流れ、時に軍国主義的又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったことに対する反省により制定されたものであり、教育に対する権力的介入、特に行政権力による介入を警戒し、これに対して抑制的態度を表明したものと解されるところ(最判S51.5.21)、この判断が文科大臣の裁量に委ねられるべきものとすることは、裁量的判断を通じて教育に対する行政権力による過度の介入を容認することになりかねず、同項の趣旨に反することになり、同項「不当な支配」の有無についても文部科学大臣の裁量権が認められるものと解することはできないと判示した。

そして、規程13条①及び②の疑念について「特段の事情」が認められるか否かを検討するとして、認定事実の疑念に関する事実を個別、具体的にすべて判断した。また、全国10校の朝鮮高級学校について、全国の朝鮮学校の運営は、学校法人ごとの個別に行われていると推認されるから、他の学校の運営状況をもって直ちに大阪朝鮮高級学校の運営状況が推認されるものではない。」とした。

国が主張する公安調査庁作成の「回顧と展望」等の記述等については、次の通りの判断を行った。「朝鮮学校では、北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き北朝鮮の国家理念を賛美する内容の教育が行われており、この教育に朝鮮総聯が一定程度関与していることが認められる。しかし、朝鮮総聯は、第二次世界大戦後の我が国における在日朝鮮人の自主的民族教育が様々な困難に遭遇する中、在日朝鮮人の民族教育の実施を目的の1つとして結成され、朝鮮学校の建設や学校認可手続などを進めてきたのであり、朝鮮総聯の協力の下、自主的民族教育施設として発展してきたということができる。このような歴史的事情に照らせば、朝鮮総聯が朝鮮学校の教育活動又は学校運営に何らかの関わりを有するとしても、両者の関連が我が国における在日朝鮮人の民族教育の維持発展を目的とした協力関係である可能性は否定できず、両者の関係が適正を欠くものと直ちに推認することはできない。  朝鮮高級学校は、在日朝鮮人子女に対しての民族教育を行うことを目的の1つとする外国人学校であるところ、母国語と、母国の歴史及び文化についての教育は、民族教育にとって重要な意義を有し、民族的自覚及び民族的自尊心を醸成する上で基本的な教育というべきである。朝鮮高級学校が、朝鮮語による授業を行い、北朝鮮の視座から歴史的、社会的、地理的事象を教えるとともに、北朝鮮を建国し、現在まで統治してきた北朝鮮の指導者や北朝鮮の国家概念を肯定的に評価するとことも、朝鮮高級学校の上記教育目的それ自体には沿うものということができ、朝鮮高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯からの不当な支配により、自主性を失い、上記のような教育を余儀なくされているとは直ちに認め難い。他方、大阪朝鮮高級学校は、学習指導要領に示されている教科及び特別活動を概ね実施し、使用している教科書に我が国や国際社会における一般的認識及び政府見解とは異なる内容の記述がある場合には、補助教材を使用するなどしてそれらをも併せ教えるようにしており」とし、日本の大学進学、部活動、支援室の実地調査(現代朝鮮歴史等の授業)も懸念の様子はなく、大阪府のワーキング調査結果でも、教え込むことを強制している指摘はないとして、本件においては、特段の事情があるとは認められないというべきであるから、本件規程13条の要件を満たすと判示した。

4.本件規定(省令ハ)に基づく指定の可否について(争点8)
 大阪地裁は、指定の義務付けについて、「本件不指定処分時において大阪朝鮮高級学校は規程13条の要件を充たしており、その余の要件も充たす。本件不指定処分後の事情に関して特段の主張立証のない現時点において、指定をしないことは裁量権の範囲を逸脱またはこれ濫用したことになる」と判示した。

5.大阪地裁判決と広島地裁判決及び東京地裁判決との相違点

冒頭に述べたように、現在、広島判決は原告敗訴(原告控訴)、大阪判決は原告完全勝訴(国控訴)、東京判決(原告控訴)は完全敗訴となったが、以下三判決の特徴について述べる。

大阪地裁判決は、高校無償化法の趣旨、目的に立脚し、委任立法である省令ハ削除の解釈、法の再委任である規程13条の解釈を行い、 支給法は、生徒等の受給権として規定(12条)しており、司法的救済の要請は高いというべきであるとし、朝鮮総聯と民族教育の実施に関する歴史的経緯や、朝鮮高級学校における民族教育の重要な意義について判示している。

他方、広島地裁判決は、国が主張する規程13条の要件該当性を主な判断対象とし、広島朝鮮学園に関する過去の判例等を引用し、国の主張に沿った判断をしている。その判断の立ち位置は、朝鮮民主主義人民共和国とその影響下にある朝鮮総聯、朝鮮総聯の影響下にある朝鮮学校という縦軸においている。

認定事実に関して、大阪地裁は、支給法制定の経緯、大阪朝鮮学校の概要等、国が主張した国内外の新聞報道等とりわけ朝鮮高級学校への支給法適用を巡る政治的状況等を認定しているが、広島地裁は、前提事実として本訴提起に至るまでを簡易に摘示し、各争点の判断の中に判決(結論)に至る認定事実を記載している。

大阪地裁は、原告本人、証人として教員、卒業生、田中宏教授を採用し、検証は認めなかったが、大阪朝鮮高級学校の授業風景等のDVDを大法廷で上映した。他方、広島地裁は、原告本人である学園理事長と生徒達、他の証人申請をいずれも採用しなかった。

東京地裁判決は、広島判決よりも、より国側の主張に沿った規程13条に関する詳細な法律解釈を行うことで、文科大臣の広範な裁量権を認め、法の本来の趣旨・目的から著しく乖離した一種の治安管理的かつ差別判断を行ったといえる。

6.高校無償化裁判で問われる本質的事項

1 本質的事項の第1は、朝鮮学校とそこで学ぶ子ども達の存在は、日本国家による朝鮮半島全域への植民地支配という歴史的経緯を有する歴史的存在であるということである。

2 本質的事項の第2は、本件訴訟は、朝鮮学校で学ぶ子ども達の教育への  権利に関する裁判であるということである。

3 本質的事項の第3は、本件高校無償化法の立法趣旨と構造に関する理解 である。

4 本質的事項の第4は、第二次安倍政権が成立した前後において、朝鮮学校とそこで学ぶ生徒に対して、高校無償化制度から排除する意図をもって本件不指定処分に至った経緯を十分に理解する必要があるということである。

5 本質的事項の第5は、本件不指定処分によって、朝鮮学校で学ぶ子ども達の等しく教育を受ける権利(教育への権利)が侵害され、他の子ども達との間で差別を受け、教育実施施設である朝鮮学校による母国語での普通教育と民族的、文化的アイデンティティーを育む教育実践が侵害され、他の教育施設との間に著しい差別を生起させ、人種的増悪による差別言動(ヘイト・スピーチ、ヘイト・クライム)の対象への誘引ともなっている事実である。

本件に関連して、2014年8月29日、国連人種差別撤廃委員会は日本政府に対し、次の勧告を行っている。

委員会は、(a)高等学校等就学支援金制度からの朝鮮学校の除外、及び(b)朝鮮学校に対し地方自治体によって割り当てられた補助金の停止あるいは継続的な縮小を含む、在日朝鮮人の子どもの教育を受ける権利を妨げる法規定及び政府の行動について懸念する(第2条、第5条)。

委員会は、締約国に対し、その立場を修正し、朝鮮学校に対して高等学校等就学支援金制度による利益が適切に享受されることを認め、地方自治体に対し、その立場を修正し、朝鮮学校に対する補助金の提供の再開あるいは維持を要請することを奨励する。委員会は、締約国が、1960年のユネスコの教育における差別待遇の防止に関する条約への加入を検討するよう勧告する。

7.大阪地裁第2民事部判決の意義

1 戦後72年にして初めて、司法が国(安倍政権)の差別行政を糾し、不指定処分を取り消し、国に対して、子ども達に就学支援金を支給するように命じた判決であり、民族教育の重要性と戦後の朝鮮総聯と朝鮮学校との関わりについても、歴史的事実に基づいて、その意義と役割について判示した歴史的勝訴判決である。

2 この判決の意義は、判決当日午後6時30分から開催された判決言い渡し報告集会での大阪朝鮮高級学校2年生女生徒の次の発言に端的に表れている。

「街にあふれるヘイトスピーチ、高校無償化の裁判、補助金の裁判と私たちが朝鮮人として生きていくことが、こんなにも難しいことなのか、また、純度100%でないとのけ者にされるような、そんな最近のニュースをみながら、本当に不安が大きくなるばかりでした。今日、裁判を聞きながら、私たちは手を握り合って、抱き合って泣きました。やっと、やっと私たちの存在が認められたんだ。私たちはこの社会で生きていっていいんだとそんなふうに言われている気がしました。差別は差別を生みます。それ以外は何も生まれません。(中略)この大阪が、日本が、そして、世界が、偏見や差別がなく、みんなが平等で、当たり前の人権が守られる世の中になることを願っています。そして、私は、そんな世の中を創っていく一員になるべく、これからもウリハッキョに通っていきます。私は、この大阪で、日本で、ウリハッキョに通う在日コリアンが本名で堂々と生きる、どこの国、どこの民族の一員であっても堂々と生きていける、いろんな人が助け合って生きる、そんな、そんな素晴らしい社会が来ることを強く願い、そのための架け橋のような存在になりたいと思っています。(中略)信念を胸に、希望を胸に、私たちがそのあとを継ぎます。」

3 司法は、多数者原理部門(立法、行政)に対する自由主義部門であり、とりわけ、社会的少数者の権利を守る部門であるから、法の支配と良心に基づき独立して(憲法76条③項)、行政権力による民族的少数者の民族教育への権利侵害や差別行政に対して、毅然として司法の本質的役割を果たさなければならない。

高校無償化裁判は、あらゆる差別、排外主義に抗い、すべての子ども達の教育への権利を非差別・平等に保障し、日本と東アジアに人権の尊重と平等で平和な共生社会を創り出す裁判でもある。そのためにも、当事者、弁護団、支援連帯する市民とのより広く深い、顔の見える「つながり」を創り出さなければならない。現在と未来を共に生きるすべての子ども達の良き隣人として。

にわ・まさお

大阪弁護士会所属。日弁連人権擁護委員会国際人権部長(2001~2009年)。大阪、近畿弁護士会人権擁護委員長(2005年)。2010年度大阪弁護士会副会長。すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク(RINK)代表など。著書に『知っていますか?移住労働者とその家族の人権 一問一答』(解放出版社)、『企業と在日外国人の人権―多民族・多文化共生する社会をめざして』(大阪企業人人権協議会)。編著に『部落差別解消推進法』(解放出版社)など。

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