編集部から

編集後記

――沖縄は日本―ヤマトの植民地か

●本号特集は「終わりなき戦後を問う」とした。本誌の第三次の創刊・復刊号(2004.秋)特集は「日本どこからどこへ」であった。10年余たち戦後70年をへた今日、創刊号で「戦後」は終わらせない、を論じた橘川さんは、やはり本号で、「長い戦後」が提起する問題について論じる。歴史修正主義者といわざるをえない安倍晋三は「戦後レジームからの脱却」を叫ぶ。安倍にとって戦後という時代は、「戦争と日本の侵略への反省を迫られる時代」であり、そんな時代は早く終わりにしたいがホンネだ。そして軍事力発動の裏付けをもって、戦前のように世界の列強の一翼として立ち振る舞うのが夢なのだろう。アベのいう「日本をとりもどす」とはそのことだ。そのための戦争法の強行であり、日米の軍事一体化を進めている。そして夏の参院選を経て見果てぬ夢―憲法改定を日程にのせることだ。今、問われるのは、「終わりなき戦後を問う」であり、「アベ政治を許さない」である。

●日本にとって沖縄とは何か、沖縄の人々にとって日本とは何か。この問いを深刻に考えざるを得ない昨今の沖縄情勢である。どう考えて日本政府は沖縄を植民地としてしか見ていないのではないか。翁長知事は辺野古代執行訴訟の冒頭陳述で“沖縄県民は歴史的にも現在においても自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされてきた、魂の飢餓感がある”と、簡潔・明瞭であるが心を揺さぶられる訴えを行った。また本号の西村さんの連載―「抗う人」で、あの百田某に「沖縄の二紙はつぶさんと」と名誉ある暴言をもらった当事者の琉球新報松元剛報道本部長が登場。読者の声を背に報道を続ける姿が生き生きと描かれている。

●政府とオール沖縄の代理戦争と注目された宜野湾市長選挙(1月24日)は、自公が総力支援した現職が勝利。オール沖縄・翁長派の新人が敗退した。早速、アベや悪代官の菅、その手先のメディアは、あたかも普天間飛行場の辺野古移転を宜野湾市民が容認とか選んだとか喧伝しているがとんでもない間違いである。宜野湾市民は危険な普天間飛行場の閉鎖(両候補共通)と2期目の現職市長は強いといわれる身近な課題で現職を選んだのだ。それにしても政府・自民のディズニーリゾートの誘致宣伝やキャロライン・ケネディーまで動員してのテコ入れは、危機感の裏返しであり必死であった。勿論選挙には負けたわけでオール沖縄派としても真剣な総括が必要だ。
 しかし各紙の出口調査でも、辺野古移設には反対が多数で、県外+国外+即時閉鎖が圧倒的だ。普天間の早期閉鎖を願う宜野湾市民でも辺野古への移設には反対が多数でありそれが民意なのだ。そもそも普天間の辺野古移設に拘ったのは、実は日本政府であり、その根拠であった抑止力論であるが、それも今や根拠をなくしている。アメリカすら海兵隊が沖縄にいる必要はない、がホンネであることは明らか。拘っているのは日本の方ではないのか。本当にふざけるなであり、まともに普天間閉鎖をアメリカと交渉せよと言いたい。そして今も沖縄の苦闘は続く。沖縄の人々は、それぞれの仕事や生活を抱えながら辺野古新基地建設反対の闘いを続けている。本土において自らの問題としての取り組みが求められている。 (矢代)

●「自分たちのまったく知らないところで自分たちの未来が決められそうになっている」。阿部さんは語る。そう、まさにそうなのだ。僕ら若い世代はそれを「皮膚感覚」で知っている。だが、一方で稲葉さんが論ずるように「不安定雇用」に脅え、また他方で大内さんが分析したように「奨学金問題」に追われている。マクロな政治状勢・社会構造に批判の声をあげなければなんら僕らの生活はかわらない。しかし、目の前の現実を生きるのに必死である。政治や社会に目をむける余裕などない。たまの休日には超ミクロなネットという個室にとじこもり、なんとか息抜きし、なんとか明日を生きようとしている。最大のジレンマだと思う。政治に目をむけなければ僕らの生活はなんらかわらないのに、そしてそれを知っているのに、それができない。けれども、「絶望の国の幸福な若者たち」で終わっていいのか。未来への期待値が低ければ低いほど、現在の幸福度は増す。現状を肯定しようとする。絶望できることは端的に希望だ。そうだ、僕らはあの夏、戦争法案に心底絶望したはずだ。あのときの絶望を、デモという希望の光を信じよう。あぁ、こんどの夏は参院選。僕らの皮膚感覚を信じよう。 (米田)

●不覚にもノロウイルスにやられました。なんとか「この一冊」原稿は仕上げましたが、編集後記にまで肉体的・精神的にたどりつけず。読者の皆様もくれぐれもご用心。(今井)

季刊『現代の理論』2016冬号[vol.7]

2016年2月1日発行

編集人/代表編集委員 住沢博紀/千本秀樹
発行人/現代の理論編集委員会

〒171-0021 東京都豊島区西池袋5-24-12 西池袋ローヤルコーポ602

URL http://gendainoriron.jp/
e-mail gendainoriron@yahoo.co.jo

郵便振替口座番号/00120-3-743529 現代の理論編集委員会

編集部から

第7号 記事一覧

ページの
トップへ