編集部から

編集後記

――戦争法案反対運動にみる日本の新たな
可能性を信じて

●本号特集は、「闘いは続く安保・沖縄」とした。2015年9月18日の深夜、日本の多くの市民は日本が何処へ行くのか、暗澹たる気持ちになったとともに何かに希望を感じたのではないだろうか。それにしても安倍晋三は歴代総理で最も危険な最悪の総理であることは間違いない。本欄でたびたび触れたが、劣化し逆走する日本。まさに劣化状況は全ての分野を覆い尽くす。今般の戦争法案をめぐって、自民党リベラルなるものは存在しているのか。自民党議員の劣化の酷さが永田町では公然と語られている。総裁選をめぐり野田聖子の立候補に露骨な圧力をかけ潰したアベ一派。民主党や維新には第二自民党的輩も多い。北朝鮮への先制攻撃を主張し、防衛官僚に“タカ派を超えたバカ派”と揶揄された元民主党外務大臣。平和の党はどこへいったのか、権力亡者か公明党。その昔、正義の味方といわれた労働組合の社会的責任は。自覚せよ連合幹部と言いたい。メディアの現状も深刻である。日本は、“総劣化の時代”と言える。反知性主義とか歴史修正主義とか難しい概念はともかく、ようするに教養と常識がないのである。その典型がアベ。

●本号巻頭に登場願った鎌田慧さんは、今回の安倍による戦争法案の強行にみられる、「少数が反対しても多数決で決めれば良いという姿勢は、議会制民主主義そのものに対する否定であり、憲法の否定でもある。さらには、人間の生き方の否定です」と指摘。同時に60年安保闘争をはじめ、日本の社会運動にほとんど関わってきた経験から、「とにかく新しい時代に、新しい言葉と新しい運動が出てきて、やっぱり変わってきたんだ」と。新たな運動の可能性を論じていただいた。本誌の千本秀樹代表編集委員は、「やはり“転換期”は続いている―さわやかな敗北」と表現している。民主党に対してその野党時代から建設的な批判・提言を続けてきた住沢博紀本誌代表編集委員は、こうした状況を分析し、2015年を戦後デモクラシー改革の年とするため、「対案病の民主党への提言」。“今回の安保法制に対する若い世代の護憲運動は、安倍自民党とは異なる、もう一つの「第2の戦後」の未来への可能性を示してくれた”と述べている。

●戦争法の廃止や実行を阻止するためにも、また日本の将来に生きていく子供や孫のためにもアベの退陣―打倒は不可欠。政治決戦になる来年7月の参院選へは野党の“統一戦線”の構築が不可避だがモタツキが目立つ。しっかりせよ民主党だ。その昔、“課題の一致・批判の自由・行動の統一」の三原則が語られたが。歴史に学べと言いたい。あ、一言。あの破廉恥漢―橋下徹が公然と蠢いている。舌根も乾かない内に、次々と平気で前言を捨てさり、顧みず、居直り、暴言、デマ、策略を発信し続ける橋下。もうすでに党籍も無いのに 政党を私物化。語るに落ちたのが、もともと金目当ての分裂騒動の当事者が、“政党助成金を返納する”と。もう何でもアリ、これなどアベや悪代官と官房機密費で話がついたのかと疑いたくなる。もうウンザリの日々。これで11・22の大阪府知事・市長のダブル選。結果は日本政治にとって大きい。今や橋本一味はアベの最大の応援団・補完勢力だ。しっかりしなはれや、大阪のおっちゃん、おばちゃん!

●沖縄情勢が緊迫。それにしても昨今のアベのやり口は、“帝国主義国の植民地支配”を思わせる露骨なアメとムチだ。政府は10月26日、首相官邸で辺野古周辺の町内会へ直接3000万円を交付することを伝えた。沖縄タイムスは27日の社説で、「まるで弁務官資金だ」「米軍統治下で、絶大な権力を握っていた高等弁務官が、その裁量で、集落の道路や水道施設の整備、公民館建設などに充てた資金。統治に好意的であるかが支給の基準。不満を抱く県民を懐柔する手段としても使われた」と。 一方29日に中谷防衛相が、「オスプレイ訓練の佐賀空港への移転を見送る」と発表。悪代官の菅は「地元の了解を得ることが当然」と言ってのけたとか。沖縄との落差、二重基準に唖然。あれだけ辺野古反対の民意が示されたのに。もはや沖縄は日本の植民地としか言いようがない。沖タイの緊急調査で、翁長知事の「承認取り消し」の支持が79%に上った(支持しないは16%)。沖縄の民意はますます自己決定権の強化、琉球独立への志向を強めて行くのではないか。
 本号で「沖縄はなぜ、今、自己決定権か」を寄稿いただいた琉球新報の新垣毅さんが、その企画報道「道標求めて」で本年度の石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞を受賞した。沖縄も来年は重大な選挙の年。2月には普天間飛行場を抱える宜野湾市の市長選があり、保守市長に対抗しオール沖縄派が奪還できるか。6月には県議会議員選挙。そして7月の参院選。私たちの周りには沖縄にアイデンティティーを持つ人は多い。苦闘する沖縄の人々への連帯をこめて一票の働きかけを。また辺野古基金も継続中だ。琉球新報、沖縄タイムスの本紙やデジタル版の読者になろう。多彩な情報入手と支援の一石二鳥。本誌はこれからも沖縄への理解を深め、連帯の途を探る情報を発信していきたい。 (矢代俊三)

●「戦争は年寄りが始めて若者が死ぬ」。ある新聞の投書欄にこんな一文があった。高校生が書いたものである。若者の保守化を見込み、18歳まで選挙権を拡大する安倍政権の「目論見」の甘さを感じさせる一文だ。多くの若い世代は、このことに気づき始めている。本号住沢論文も指摘するように、事実、「戦争法案」、「違憲法案」、「立憲主義の否定」を叫んだ若い世代の反対運動は、「目論見」を粉砕したといってもいい。また反対運動は同時に、若者の間にデモクラシーを担う意識や、デモに参加する文化を復活させた。いや、新しい形のデモクラシーを創出させたのである。希望の光だ。この意義はこれから明らかになるだろう。本誌はこうした時代や世代の地殻変動の徴候を発信したいと思う。もう一度くり返そう。まぎれもない真実である。「戦争は年寄りが始めて若者が死ぬ」。 (米田祐介)

ます、総理から前線へ

「ます、総理から前線へ」

●北京出張から帰り、あわただしくヨーロッパ出張の準備に忙殺されています。本号の若者の新たな動きや可能性について本欄で触れたいこともありましたが今回はパスします。まさに移民流入の真っ直中にあるスロベニアで、揺れ動く政治情勢の実態や若者のホンネ、そして“戦争法案”強行の日本をどう見ているかなど探ってきたいと思います。(今井 勇)

季刊『現代の理論』2015秋号[vol.6]

2015年11月1日発行

編集人/代表編集委員 住沢博紀/千本秀樹
発行人/現代の理論編集委員会

〒171-0021 東京都豊島区西池袋5-24-12 西池袋ローヤルコーポ602

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